白梅と春の雪
毎日の行き帰りに見る、とあるお家の白梅が
ついこの間ほころんだかと思えば
いまを盛りと咲き誇っている。
遠くから見れば雪化粧したようでいて
近くによれば誰にもわかる。
短い冬でも たえて待ちこがれていたのか
こぼれるようなそのかおり。
しかしながら
花のいのちは短くて(辛きことのみ多かりき)、
桃や桜をみることもなく、しぼんで落ちてしまうのだから
多少前のめりの美しさでも、
いたしかたない。
とはいえこの時期はまだ
東京でも雪の降ることはある。
歌舞伎の河内山宗俊では
「三千歳直侍」のふたりがよく知られている。
「みちとせ なおざむらい」ですよ。
さんぜんさい、とか よまないよーにな。
三千歳をたずねる直次郎の
行く道に降るのは、春の雪。
* * * * *
冴えかえる春の寒さに降る雨も
暮れていつしか雪となり
上野の鐘の音も凍る
* * * * *
この清元「忍逢春雪解」を上手く借用したのが、
新派のために鏡花が書き下ろした「湯島の境内」である。
白梅薫る湯島の天神さまのベンチをはさんで
切れるの別れるのとやる、あれだ。
去年の夏の通し公演では
仁左衛門の主税が震えるほどの熱演を見せた。
いや、彼のみならぬ 一座すべてに
魔法がかかったかと思うほど素晴らしかったのだけれども。
* * * * *
邪険なようで、可愛がって、ほうり放しで、行届いて。
* * * * *
そんな早瀬さんは旅立ってしまうのだが
マキノ正博の撮った映画では、
新橋ステエションのシーンが
実に不思議な雰囲気を醸し出している。
柱と柱のあいだをどんどん走るお蔦。
それをどんどんどんどん
おかまいなしにつなげていく。
立ち止まり、頬をつたう涙もそのままに
うつろなまなざしで遠くをながめる
山田五十鈴のお蔦の表情もまた、なんともいえない。
こんな事言うのもおかしいけれど、
溝口健二的なのだ。
一方、小説のほうでは
真砂町のひとり娘、妙子と主税の別れが胸にしみる。
* * * * *
主税は思はず、唇を指環に接けた。
「忘れません。
私は死んでも鬼に成って。」
君の影身に付添はん、と
青葉をさらさらと鳴らしたのである。
* * * * *
でもこれは恋でなく、
愛してやまない不幸な妹への
つぐないの言葉だった。
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●昨日のテーマソング
Beg to Heaven/Riot Squad
●昨日のこんだて
・トマトとアンチョビのパスタ
・グリンサラダ サラミのせ
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